【対称座標法】送電系統の非対称故障計算

各対称成分での発電機・送電線・変圧器の振る舞い

同期発電機

同期発電機の基本式は式 (1.1) となる

詳しい導出はここでは省略する(近いうち執筆予定)

\begin{aligned} \left[ \begin{array}{c} \dot{V}_0 \\ \dot{V}_1 \\ \dot{V}_2 \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{c} 0\\ \dot{E}_a\\ 0\\ \end{array} \right] - \left[ \begin{array}{c} \dot{Z}_0&0&0\\ 0& \dot{Z}_1&0\\ 0&0&\dot{Z}_2\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} \dot{I}_0 \\ \dot{I}_1 \\ \dot{I}_2 \end{array} \right]\tag{1.1} \end{aligned}

発電機は正相成分のみ発生させるので,正相の対称分回路のみに発電機が接続されている

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架空送電線

中距離送電線(20 km〜100 km)では,R, L, Cを全て考慮する

ここではCを2つに分けたπ型等価回路を考える

(R, LをCの前後に分けるのがT型等価回路である.短距離送電線ではCは省略する.長距離送電線では分布定数回路や中距離送電線の四端子網を繋ぎ合わせて使われることが多い)

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次に,各素子の大小関係を考えてみる

抵抗R

各成分同じ電流が流れた時に発生する電圧降下はどの成分でも同じである.($ \dot{I}_0 $は一相分の電流であることに注意)

よって,$R_1=R_2=R_0$

インダクタンスL

各対称成分でのインダクタンス$L_1,\,L_2,\,L_0$の大小を考えるには,各成分の電流によって発生する磁束の鎖交面の大きさを考えれば良い

正相・逆相電流によるインダクタンス$L_1,\,L_2,$については,三相交流が流れている3つの線からちょうど等しい距離にある線(中性線)で各相の電流による磁束が打ち消さるため,中性線と各相の線の間が鎖交面となる

それに対し,零相電流(各線に流れる電流の大きさ・位相が同じ)によるインダクタンス$L_0$については,鎖交面は地面との間となる.

したがって,$L_1=L_2\lt L_0$となる

キャパシタンスC

正相・逆相成分のキャパシタンス$C_1,\,C_2$については,各架空線の対地静電容量に加え,他の相との静電容量も加わる

それに対し,零相電流によるキャパシタンス$C_0$については,各相の線に同じ大きさ・位相の電圧がかかるため,他の相の線との間の静電容量は発生しない

したがって,$C_1=C_2\gt C_0$となる

変圧器

下図のようなY-Y結線,Y-Δ結線(Δ-Y結線),Δ-Δ結線の場合の各対称成分での等価回路を考える

接地インピーダンス$\dot{Z}_N$は,直接接地なら$0$, 非接地なら$\infty$とすればよい

Y-Y結線 変圧器 Y-Δ結線 変圧器 Δ-Δ結線 変圧器

正相と逆相

正相成分,逆相成分は接地点に電流は流れないため,結線方式に関わらず正常な対称三相交流と同様となる.

よって,漏れリアクタンス$ jX_l $のみ考えれば良い

変圧器 零相成分 等価回路

零相
Y-Y結線

a相だけみると下図のようになる

Y-Y結線

一次側,二次側について式 (1.1), (1.2) が成り立つ

また,変圧器部分について単位法表現すると式 (1.3), (1.4) が成り立つ

接地インピーダンスには$3\dot{I}_0$が流れることに注意する

\begin{aligned} \dot{V}_0'&=3\dot{Z}_{N1}\dot{I}_0'+\dot{E}_a'\tag{1.1}\\ \end{aligned}
\begin{aligned} \dot{V}_0''&=-3\dot{Z}_{N2}\dot{I}_0''+\dot{E}_a''\tag{1.2}\\ \end{aligned}
\begin{aligned} \dot{E}_a'&=\dot{E}_a''+jX_l\dot{I}_0'\tag{1.3}\\ \end{aligned}
\begin{aligned} \dot{I}_0'&=\dot{I}_0''\tag{1.4} \end{aligned}

式 (1.1)〜(1.4)より,

\begin{aligned} \dot{V}_0'&=3\dot{Z}_{N1}\dot{I}_0'+(\dot{E}_a''+jX_l\dot{I}_0')\\ &=3\dot{Z}_{N1}\dot{I}_0'+\dot{V}_0''+3\dot{Z}_{N2}\dot{I}_0''+jX_l\dot{I}_0'\\ &=\dot{V}_0''+(jX_l+3\dot{Z}_{N1}+3\dot{Z}_{N2})\dot{I}_0'\tag{1.5} \end{aligned}

以上から,等価回路は下図

Y-Y結線 零相成分 等価回路

Y-Δ結線

a相だけみると下図のようになる

Y-Δ結線 零相成分

Y-Y結線と同様に方程式を立てると,

\begin{aligned} \dot{V}_0'&=3\dot{Z}_{N1}\dot{I}_0'+\dot{E}_a'\tag{1.6}\\ \end{aligned}
\begin{aligned} \dot{E}_a'&=\dot{E}_a''+jX_l\dot{I}_0'\tag{1.7}\\ \end{aligned}

二次側のΔ結線では零相電流が流れないので,$\dot{E}_a''=0$

よって,

\begin{aligned} \dot{V}_0'&=(jX_l+3\dot{Z}_{N1})\dot{I}_0'\tag{1.8} \end{aligned}

等価回路は下図

Y-Δ結線 零相成分 等価回路

Δ-Δ結線

一次側二次側両方とも,零相成分は断線状態となり零相電流は流れない

よって,等価回路は下図

Δ-Δ結線 零相成分 等価回路

送電系統の各対称成分の回路のまとめ

次のような電力系統を考える

  1. 中性点が接地されている発電機とされていない発電機が並列に接続されている

  2. Δ-Y結線の変圧器で昇圧

  3. Y-Δ結線の変圧器で降圧

  4. 三相同期電動機の負荷が接続されている

故障点は2と3の間とし,故障点から変圧器までの間は短距離送電線として考える

すると,この系統の各対称成分の回路は,

正相成分は

送電系統 正相成分

逆相成分は

送電系統 逆相成分

零相成分は

送電系統 零相成分

送電系統の非対称故障計算の大まかな流れ

短絡故障,地絡故障の場合

短絡故障と地絡故障では,鳳-テブナンの定理*1を用いることで,電源を取り除いたときに故障点からみた系統の各対称成分のインピーダンス$\dot{Z}_0,\,\dot{Z}_1,\,\dot{Z}_2$と,故障直前まで故障点に現れていた電圧$\dot{E}_f$を用いて,発電機近傍の故障計算と同じように対称分回路を作成できる

すなわち,故障点からみえる系統全体を,対称成分が$\dot{Z}_0,\,\dot{Z}_1,\,\dot{Z}_2$で誘導起電力が$\dot{E}_f$と表される発電機に置き換えれば良いということ

なお,発電機近傍の故障計算については下の記事参照

【対称座標法】基本の解法と各故障回路の計算のまとめ - チャーターブログ

断線故障の場合

断線故障 対称座標法

断線故障の場合(上図は一相断線故障),故障点からみて両側の電圧,電流についての等式を立てる

対称成分の故障点の両側の電圧と電流の関係を導き,下図のような対称分回路の端子をうまく接続する

他のブログのように電圧差を考えても良い

図中の$\dot{Z}_0',\,\dot{Z}_1',\,\dot{Z}_2',\,\dot{Z}_0'',\,\dot{Z}_1'',\,\dot{Z}_2''$, $\dot{E}_f',\,\dot{E}_f''$は鳳-テブナンの定理を用いて置き換えられた,故障点からみた系統全体のインピーダンス,誘導起電力である

対称座標法 断線故障

対称座標法による送電系統の断線故障計算まとめ

一相断線故障

a相が断線した場合

一相断線故障 対称座標法

www.charter-blog.com

二相断線故障

余裕があれば書く予定

*1:鳳-テブナンの定理はシャルル・テブナン(仏)と鳳秀太郎(東京帝国大学工学部教授.電気学会第8代会長.)が同時期に発見した法則であり,世界的にはテブナンの定理と呼ばれている.しかし,鳳秀太郎はこの定理をテブナンと関係なく独自に,かつ,交流電源にも成り立つことを発見しており,本ブログでは鳳秀太郎先生に最大の敬意を表し「鳳-テブナンの定理」と呼んでいる.ちなみに,鳳秀太郎は与謝野晶子の実兄で,三男の鳳誠三郎と孫の鳳紘一郎も東京大学名誉教授を務めた.鳳秀太郎 - Wikipedia