【対称座標法】基本の解法と各故障回路の計算のまとめ

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ベクトル・オペレーター "a" について

ベクトル・オペレーター "a" は,あるベクトルに掛けるとその大きさを変えずに位相角を120°進ませることを表し,式 (0.1) と表される.

\begin{aligned} a&=e^{j\frac{2}{3}\pi}\\ &=\cos\frac{2}{3}\pi+j\sin\frac{2}{3}\pi\\ &=-\frac{1}{2}+j\frac{\sqrt{3}}{2}\tag{0.1} \end{aligned}

この基本的な性質から,次の性質を持つ

\begin{aligned} a^3&=1\tag{0.2}\\ \end{aligned}
\begin{aligned} a^2+a+1&=0\tag{0.3} \end{aligned}

式 (0.2) は3回$\frac{2}{3}\pi$回転させると元に戻ることを意味する

式 (0.3) はあるベクトルに,それを$\frac{4}{3}\pi,\,\frac{2}{3}\pi$回転させたベクトルを足すと0になることを意味する

式 (0.3) を変形させて得られる$a^2+a=-1$や,$a^2-a=-j\sqrt{3}$の関係はよく使う

ベクトルオペレーター "a" を使うことで,三相交流の各相のベクトルを1つの相のベクトルで表すことができる

例えば,平衡状態の三相交流について,下図のようにa相,b相,c相の順に相が回転するとすれば(図のベクトルが反時計回りに回転するとa, b, cの順に現れる),電圧であれば$\dot{V}_b=a^2\dot{V}_a$, $\dot{V}_c=a\dot{V}_a$と表される

これは,$\dot{V}_b$は$\dot{V}_a$より$\frac{2}{3}\pi$遅れた,つまり$\frac{4}{3}\pi$進めたもので,$\dot{V}_c$は$\dot{V}_a$を$\frac{2}{3}\pi$進めたものであると解釈できる

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対称座標法の大まかな流れ

以下,a相,b相,c相の対地電圧を$\dot{V}_a,\,\dot{V}_b,\,\dot{V}_c$, 線電流を$\dot{I}_a,\,\dot{I}_b,\,\dot{I}_c$とする

対称座標法 三相交流発電機

故障条件を列挙

相電圧,線電流の状態を式に表す

a相とb相間の直接短絡なら$\dot{V}_a=\dot{V}_b$かつ$\dot{I}_a+\dot{I}_b=0$,a相のインピーダンス$\dot{Z}$を介した地絡なら$\dot{V}_a=\dot{Z}\dot{I}_a$と表される

電圧,電流の対称分変換に故障条件を代入

電圧,電流の対称分変換は式 (1.1), (1.2) と表される

添字0は零相成分で,各相のベクトルをそのまま足して3で割れば良い

添字1は正相成分で,a相,b相,c相の順で相が回転しているので,b相を$\frac{2}{3}\pi$進ませ, c相を$\frac{4}{3}\pi$進ませて3で割ればよい

添字2は逆相成分で,a相,c相,b相の順で相が回転しているので,b相を$\frac{4}{3}\pi$進ませ,c相を$\frac{2}{3}\pi$進ませて3で割ればよい

\begin{aligned} \left[ \begin{array}{c} \dot{V}_0 \\ \dot{V}_1 \\ \dot{V}_2 \end{array} \right] &= \frac{1}{3} \left[ \begin{array}{c} 1&1&1\\ 1&a&a^2\\ 1&a^2&a\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} \dot{V}_a \\ \dot{V}_b \\ \dot{V}_c \end{array} \right]\tag{1.1} \end{aligned}
\begin{aligned} \left[ \begin{array}{c} \dot{I}_0 \\ \dot{I}_1 \\ \dot{I}_2 \end{array} \right] &= \frac{1}{3} \left[ \begin{array}{c} 1&1&1\\ 1&a&a^2\\ 1&a^2&a\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} \dot{I}_a \\ \dot{I}_b \\ \dot{I}_c \end{array} \right]\tag{1.2} \end{aligned}

発電機の基本公式から各対称成分の値又は条件式を導出

発電機の基本公式は式 (1.3) と表される

発電機は正相成分のみ発生させる

零相成分,逆相成分の回路ではインピーダンス成分$\dot{Z}_0,\,\dot{Z}_2$による電圧降下のみが現れ,正相成分の回路では電圧降下に発電機が発生する正相の相電圧を合わせた電圧が現れる

零相回路のインピーダンスには,発電機の零相インピーダンス$\dot{Z}_0$に加え,接地抵抗$\dot{Z}_N$も含まれる.(直接接地では$0$, 非接地では$\infty$とする.)

接地している場合,そこには零相成分しか流れないが,ここで考えている零相電流$\dot{I}_0$は一相分の零相成分の電流であるため,$3\dot{Z}_f$とする.

\begin{aligned} \left[ \begin{array}{c} \dot{V}_0 \\ \dot{V}_1 \\ \dot{V}_2 \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{c} 0\\ \dot{E}_a\\ 0\\ \end{array} \right] - \left[ \begin{array}{c} \dot{Z}_0+3\dot{Z}_N&0&0\\ 0& \dot{Z}_1&0\\ 0&0&\dot{Z}_2\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} \dot{I}_0 \\ \dot{I}_1 \\ \dot{I}_2 \end{array} \right]\tag{1.3} \end{aligned}

(対称分回路を作成)

各相の電圧,電流は,対称成分の電圧と電流の値や条件式から対称分回路を作成する

零相成分はインピーダンス$\dot{Z}_0,\,\dot{Z}_N$,逆相成分は$\dot{Z}_2$,正相成分はインピーダンス$\dot{Z}_1$と発電機のa相の誘起電圧$\dot{E}_a$から成り,上で求めた各対称成分の条件に合うように下のように各回路を繋ぐ

このとき,インピーダンス$\dot{Z}_f$を介した地絡や短絡のときはそれも接続する

対称座標法 一相地絡故障 インピーダンス地絡 対称座標法 二相短絡一相地絡故障

回路を作らなくても計算で対称成分を導出できるが,かなり煩雑になることがあるので回路でもできるようにしておきたい

対称分逆変換で各相の電圧,電流を導出

電圧,電流の対称分逆変換は式 (1.4), (1.5) と表される

各対称成分の係数行列は,式 (1.1) の対称分変換の各相電圧の係数行列の逆行列となっている(各自確かめよ)

\begin{aligned} \left[ \begin{array}{c} \dot{V}_a \\ \dot{V}_b \\ \dot{V}_c \end{array} \right] &= \left[ \begin{array}{c} 1&1&1\\ 1&a^2&a\\ 1&a&a^2\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} \dot{V}_0 \\ \dot{V}_1\\ \dot{V}_2 \end{array} \right]\tag{1.4}\\ \end{aligned}
\begin{aligned} \left[ \begin{array}{c} \dot{I}_a \\ \dot{I}_b \\ \dot{I}_c \end{array} \right] &= \left[ \begin{array}{c} 1&1&1\\ 1&a^2&a\\ 1&a&a^2\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} \dot{I}_0 \\ \dot{I}_1 \\ \dot{I}_2 \end{array} \right]\tag{1.5} \end{aligned}

対称座標法による故障回路の計算の記事

まずは直接短絡or地絡で直接接地しているときの故障回路を計算しました

余裕があればインピーダンスを介した短絡or 地絡,接地がインピーダンス接地の場合も分けて別に書く予定です

☆の数はレベルです

一相地絡故障

a相が地絡した場合

三相短絡故障

直接地絡・直接接地☆☆☆

対称座標法#1 一相地絡故障(直接地絡,直接接地) - チャーターブログ

直接地絡・インピーダンス接地☆☆☆

対称座標法#8 一相地絡故障(直接地絡,インピーダンス接地) - チャーターブログ

インピーダンス地絡・直接接地☆☆☆

対称座標法#7 一相地絡故障(インピーダンス地絡,直接接地) - チャーターブログ

インピーダンス地絡・インピーダンス接地☆☆☆☆

対称座標法#9 一相地絡故障(インピーダンス地絡,インピーダンス接地) - チャーターブログ

二相短絡故障

b相とc相が短絡した場合

三相短絡故障

直接短絡・直接接地☆☆☆☆

対称座標法#2 二相短絡故障(直接地絡,直接接地) - チャーターブログ

二相地絡故障

b相とc相が地絡した場合

三相短絡故障

直接地絡・直接接地☆☆☆☆☆☆

対称座標法#3 二相地絡故障(直接地絡,直接接地) - チャーターブログ

三相短絡故障

a相,b相,c相が短絡した場合

三相短絡故障

直接短絡・直接接地☆

対称座標法#4 三相短絡故障(直接短絡,直接接地) - チャーターブログ

三相地絡故障

a相,b相,c相が地絡した場合

三相短絡故障

直接地絡・直接接地☆

対称座標法#5 三相地絡故障(直接地絡,直接接地) - チャーターブログ

二相短絡一相地絡故障

b相とc相が短絡し,a相が地絡した場合

三相短絡故障

直接短絡直接地絡・直接接地☆☆☆☆☆

対称座標法#6 二相短絡一相地絡故障(直接短絡直接地絡,直接接地) - チャーターブログ

参考

対称座標法5(実践編2) 地絡回路の計算(1)一相地絡、二相短絡地絡 | 音声付き電気技術解説講座 | 公益社団法人 日本電気技術者協会

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