電気通信主任技術者試験(伝送交換)の「専門的能力(無線)」で出題されるディジタル通信についてまとめました
過去問を解きながら参考書にコピペしたものをもとに書いたものなので、怪しいところがあるかもしれませんが、参考程度に使用して下さい
試験の過去問の他、電気通信主任技術者試験研究会のテキストからも引用しました
QPSK
4位相偏移変調、Quadrature Phase Shift Keying
QPSKは1シンボル当たり2 bit の情報を有しており、理想ナイキスト帯域で伝送すると周波数利用効率は2 bit/s/Hzとなる
送信電力効率の向上が図れるが、周波数利用効率は低下する
オフセットQPSK
I軸とQ軸に時間差を付けて移動させ原点を避けたもの
QPSKで180度一気にずれるところを一度90度ずれてから更に90度変わるようにすることで、原点を避けることができる
受信に遅延検波が使えない
QAM
直角位相振幅変調、Quadrature Amplitude Modulation
QAM信号は、直交する二つの系統の搬送波を多値信号系列でASK偏変調し、それらを加算することで得られる
伝送帯域幅と周波数利用効率の式が重要です
シンボル周期$ T_s $,ナイキスト周波数$ f_1 (=1/T_s) $, ロールオフ率α ($ 0 \leq \alpha \leq 1$), 伝送容量を$ R_b \,[\mathrm{bit/s}] $とすると, $ 2^m $値QAM方式の符号伝送速度は$ 1/T_s = R_b/m\,[\mathrm{Baud/s}] $で, ナイキスト帯域幅は$ R_b/m\,[\mathrm{Hz}] $, 伝送帯域幅は$ B=(1+\alpha)R_b/m\,[\mathrm{Hz}] $となり, 周波数利用効率は$ R_b/B = m/(1+\alpha) [\mathrm{bit/s/Hz}] $となる.
引用: 小西, 奥田, 宮垣, & 嘉也. (1985). マイクロ波ディジタル変復調方式における帯域内振幅偏差とビット誤り率の関係. 岡山理科大学紀要. A, 自然科学, 21, 139-149.
位相にも情報を持つので、復調は同期検波によらなければならない
雑音やフェージングの影響を受けると、信号空間上の信号点位置が変動して、受信側で隣接する信号点と誤って判断しビット誤りが発生することがある
多相PSKでは搬送波の位相のみに情報が載せられているので、振幅制限器を用いて搬送波の振幅を一定に保ち、基準位相の搬送波との位相差を検出することにより、雑音による振幅変動の影響を取り除いて検波・復調することができる
一方、多値QAMはそれぞれ独立して振幅が多値化された直交する搬送波を合成して送信する方法であり、復調する場合には π/2rad の位相差を利用して分離した後、別々に検波する
この方法は多くの情報を高効率で伝送できるが、レベル変動や雑音の影響を受けやすい
そのため、第3.5世代(HSDPA)以降の携帯電話システムにおいては、受信信号の品質に応じて送信信号の変調多値数と誤り訂正符号の符号化率を動的に変化させるAMC(適応変調符号化、Adaptive Modulation and Coding)が用いられている
デジタル直交復調器
高周波帯の受信信号又は一旦中間周波数帯に周波数変換 された受信信号を、局 部 発 振 器で生成される局部発振波と乗算し、直交するIQベースバンド信号として出力する
IQベースバンド信号の高調波成分は乗算器の出力段にLPFを配置して除去することができる
デジタル直交復調器を構成する乗算器には、ギルバートセル型ミキサやダイオードミキサなどが用いられる
デジタル直交復調器は、IQに対応した二つの乗算器と90度移相器から構成される。
FSK (Frequency shift keying)
FSKには非コヒーレントおよびコヒーレント形式に分けられる。
非コヒーレント形式では瞬時周波数は「マーク周波数」と「スペース周波数」の間を変動する
コヒーレント形式では出力信号に位相の不連続性はない
送信電力効率の向上が図れるが、周波数利用効率は低下する
MSK (Minimum Shift Keying)
FSKでの「1」と「0」の2つの周波数の差を可能な限り小さくしたもの
FDM/FM/FDMA
複数のユーザからのFM信号を周波数多重し、この多重信号で搬送波を変調する ことにより通信路を周波数分割して多元接続したもの
FM変調された搬送波のスペクトルは、変調指数が上がると正規分布に近づく
FDM/FM/FDMAにおいて中継器の帯域を有効活用するために、複数の搬送 波を互いの干渉量を最小限に抑えながら配置していく
FDMA方式では、各ユーザには特定の周波数チャネルを割り当て、どのユーザにも割り 当てられない空きチャネルへ相互変調積を集中的に落とし込むことにより相互変調積の影響 を低減することができる
OFDM
直交周波数分割多重、Orthogonal Frequency Division Multiplexing
直交性を持つ複数のサブキャリアをデジタル変調して合成する多重変調方式
送信機側において各シンボルにガードインターバル(サイクリックプレフィックス)を付加することにより、マルチパスに起因するフェージングの影響を軽減している
OFDM信号は、隣り合うサブキャリアスペクトルが互いに重なっているが、サブキャリア間の直交性を利用することでシンボル間干渉を回避し、各サブキャリアを変調するデータシンボルを正しく取り出すことができる
OFDM変調器の処理
送信すべきデータビット列は、複素シンボル列に変換され、その後、直並列変換によりN個の複素シンボルに変換される
このN個の複素シンボルは逆離散フーリエ変換によって一括変換され、N個のOFDMシンボルの標本値が生成される
生成された標本値は、並直列変換により連続信号に変換され、複素ベースバンドOFDM信号が生成される
複素ベースバンドOFDM 信号の実部に対して搬送波が掛け合わされ、搬送波帯OFDM信号が生成される
しかし、OFDMには、ピーク電力対平均電力が大きく、電力増幅器が非効率になることや、周波数誤差の影響を受けやすいといった弱点がある
一方、シングルキャリア方式においてはマルチパスに対する耐性は、OFDMと比較して信号処理が若干複雑になるが、サイクリックプレフィックスを付加し、周波数領域の等化を行うことにより十分な性能が得られることが判明している
※参考: https://www.jstage.jst.go.jp/article/essfr/1/2/1_2_2_35/_pdf
SS-TDMA
アップリンクビームとダウンリンクビーム間が通信衛星上に搭載されたスイッチで接続され、このスイッチ切替えと連動してTDMA通信を行うシステムは、SS-TDMAシステ ムといわれる。
SS-TDMA技術を用いることにより、マルチビーム衛星通信での地球局間の相互接続性を確保することができる
CDMA
CDMA方式は、多くの通信が互いに干渉し合いながら動作するシステムとして運用されるため、伝搬状況やトラヒックにより大きく変動すると考えられるため、CDMA方式のシステム設計においては、電波伝搬はもちろんのこと、トラヒックをも考慮しなければならない
また、上り回線と下り回線の無線回線設計方法が異なるという特徴もある
上り回線と下り回線の違い
上り回線は多数の移動局から送信された信号を基地局において同時に受信するのに対して、下り回線では、基地局が一括して送信した信号を多数の移動局がそれぞれの場所で受信する
上り回線と下り回線ともCDMA方式ではSIR基準の送信電力制御が適用されるため、上り回線では同一基地局内の移動局からの信号電力はほぼ同程度にそろっているのに対して、下り回線では基地局に近 い移動局は、基地局から遠い移動局へ大きな電力で送信される信号からの干渉を被ることになるなど、上り回線と下り回線では干渉のメカニズムが異なっている
さらに下り回線では、直交符号化が施されていること、報知情報やページング情報を送出するための共通制御チャネルが存在すること、共通パイロットチャネル方式が適用されていることなど、上り回線との相違点を踏まえた設計が必要となる
検波
変調されている受信信号と基準となる搬送波を乗算することで行われる
位相変調に対しては常に同期検波を用いなければならない
遅延検波方式は雑音を含む信号が基準信号であるため、同期検波方式よりC/N対ビット誤り率特性が劣っているが、基準搬送波の再生が不要なため簡易な回路構成で実現できる
非同期検波方式の方が回路が簡単
包絡線検波方式では、帯域通過フィルタ出力の包絡線振幅の大小のみで送信情報を判定する
BPSK信号の復調に用いられる遅延検波では、位相が時間とともに変動するフェージング 環境下において、2シンボル間の変動が小さいときに安定した復調特性が得られる
割り当て
ランダムアクセス
個々の地球局が必要に応じて比較的自由に回線にアクセスする方式
要求割当てと比較して回線制御は容易であるが、一般に、回線利用効率の高いネットワークの構築は困難である
その他
直接拡散(DS)方式では、PNコードなどを拡散コードとして用いてスペクトル拡散変調 が行われる
周波数ホッピング(FH)には、1シンボル以内に複数回ホッピングを行う高速FHと複数 のシンボルごとにホッピングを行う低速FHがある
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