今回は基本差動対についてまとめました
前回はカスコード回路についてまとめましたが、記事に書くことでより記憶に残り、いい勉強になったので、またテスト勉強も兼ねて書いてみました
差動対とは
共通する同相成分を打ち消し、2つの入力の間の差で動作する回路
外部からのノイズは2つの入力に等しく乗るため、差動対によりノイズの影響を除去できる
なお、この同相成分を取り除く性能の指標を同相除去比(CMRR)と呼ぶ
差動対の最大の特長は、2つの入力信号の差分に対して動作する点です。言い方を変えると、差分に対してのみ動作し、位相が同じである(同相の)信号を打ち消します。
この点は、非常に重要です。この特長によって、電源や外部から信号に混入した雑音を除去できるからです。一般に2本の信号線を使う場合、外部から混入する雑音は各信号線に同相信号として重畳します。また前述のように、増幅器として機能するので、雑音が混入した小さい信号を「ひろう」には最適です。同相信号を除去する性能の指標は、「同相除去比(CMRR)」と呼び、オペアンプのデータシートなどに記載されています。
引用:
第13回 アナログ回路に不可欠な差動対 (2/2) - EE Times Japan
回路
基本作動対の回路は下のようになる
2つのソース接地回路がセットになっている
動作
Vin1 << Vin2のとき
$ I_{ss} $は全て$ M_2 $を流れる($ I_{D2} \approx I_{SS} $)ので
\begin{aligned}
V_{OUT1} &= V_{DD}\\
V_{OUT2} &= V_{DD} - R_LI_{SS}
\end{aligned}
よって、$ V_{IN1} - V_{IN2} << 0 $のとき
\begin{aligned}
V_{OUT1} - V_{OUT2} = R_LI_{SS}
\end{aligned}
Vin1 >> Vin2のとき
$ I_{ss} $は全て$ M_1 $を流れる($ I_{D1} \approx I_{SS} $)ので
\begin{aligned}
V_{OUT2} &= V_{DD}\\
V_{OUT1} &= V_{DD} - R_LI_{SS}
\end{aligned}
よって、$ V_{IN1} - V_{IN2} >> 0 $のとき
\begin{aligned}
V_{OUT1} - V_{OUT2} = - R_LI_{SS}
\end{aligned}
Vin1 = Vin2のとき
$ I_{ss} $は$ M_1 $と$ M_2 $を等しく流れる($ I_{D1} = I_{D2} = \frac{1}{2}I_{SS} $)ので
\begin{aligned}
V_{OUT1} = V_{OUT2} = V_{DD} - \frac{1}{2}R_LI_{SS}
\end{aligned}
よって、このとき
\begin{aligned}
V_{OUT1} - V_{OUT2} = 0
\end{aligned}
入力電圧の差と出力電圧の差は下図のようになる
入力の分解
2つの入力は次のように同相成分($ V_0 $)と差成分($ \Delta V_{IN} $)分解できる
\begin{aligned}
V_{IN1} &= \frac{V_{IN1}+V_{IN2}}{2}+\frac{V_{IN1}-V_{IN2}}{2} = V_0 + \Delta V_{IN}\\
V_{IN2} &= \frac{V_{IN1}+V_{IN2}}{2}-\frac{V_{IN1}-V_{IN2}}{2}= V_0 - \Delta V_{IN}
\end{aligned}
差成分の電圧増幅率
差成分の小信号成分に対しては、電流源の上の$ M_1, M_2 $が合流する所の電圧は変化しない(証明略)
よって、片方の小信号等価回路は次のようなソース接地回路となる
ソース接地回路の電圧増幅率が$ -g_mR_L $と表されることから、差成分の電圧増幅率は
\begin{aligned}
A_{v.diff.half} = \frac{V_{OUT1}-0}{V_{IN1}-V_{IN2}} = \frac{\Delta V_{OUT}}{2\Delta V_{IN}} = -\frac{1}{2}g_mR_L
\end{aligned}
ちなみに、 上式の分子の$ V_{OUT1}-0 $を$ V_{OUT1}-V_{OUT2} $としたものを全差動ゲインと呼び、次のように表される
\begin{aligned}
A_{v.diff.all} = -g_mR_L
\end{aligned}
同相成分の電圧増幅率
同相成分については、両側の回路を一つにまとめ、ドレイン側の負荷抵抗:$ \frac{R_L}{2} $、ソース側の負荷抵抗:$ R_{SS} $、トランジスタの相互コンダクタンス: $ 2g_m $、ドレイン抵抗:$ \frac{1}{2}r_0 $と考えればよい
ソース抵抗付きソース接地回路の電圧増幅率の近似式に代入することで、同相成分の電圧増幅率は
\begin{aligned}
A_{v.com} \approx -\frac{\frac{R_L}{2}}{R_{SS}} = -\frac{R_L}{2R_{SS}}
\end{aligned}
同相除去比
上で求めた差成分、同相成分の電圧増幅率から、同相除去比が求まる
\begin{aligned}
\mathrm{CMRR} = \frac{A_{v.diff.half}}{A_{v.com}} = \frac{\left| -\frac{1}{2}g_mR_L\right|}{\left|-\frac{R_L}{2R_{SS}}\right|} = g_mR_{SS}
\end{aligned}
同相除去比(CMRR)は同相成分を取り除く性能を表し、値が大きいほど良い
例えば、CMRRが大きい時、分母の$ A_{v.com} $(同相成分の電圧増幅率)は分子の$ A_{v.diff.half} $(差成分の電圧増幅率)に対して小さくなるが、これは入力の同相成分をより除去できていることを意味している
おわりに
やはり記事に書くと非常に考えがまとまり、理解が深まります
下の記事によると、学習するには「他の人に教える」ことが最も効率が良いそうです
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今後もこんな感じで資格試験や大学の勉強をしていこうと思います