山に登っていた時のことです
遠くに休憩所が見え、そこまでの距離が知りたいと思いました
正確である必要はなく、分速で割ることでおよそ何分で到着するかを知りたかったのです
そこで、次の近似式を思いつきました
\begin{aligned}
d \approx 60\times\frac{h}{\theta}
\end{aligned}
$ d $: 目標物までの距離 [m]
$ h $: 目標物の高さ [m]
$ θ $: 目標物の見え方(角度)[°]
($ θ $が小さいほど誤差が小さい)
正確に求める場合は60を57にする
近似式の導出と、この式の精度を見ていきましょう
近似式の導出方法
下の画像を見て下さい
θが十分小さい時、$ \tan \theta \approx \theta $と近似できることを利用しています
理論値との誤差
h = 3m場合
1階建ての休憩所の屋根の地面からの高さが約3 mです
\thetaが小さければかなり近い値を取っています

実際に用いる場面の多い100以上の場合を見てみましょう
主な$ \theta $での誤差は次のようになりました
θ[°] | 理論値[m] | 近似値[m] | 相対誤差 |
0.5° | 344m | 360m | 4.72% |
1° | 172m | 180m | 4.73% |
2° | 85.9m | 90m | 4.76% |
3° | 57.2m | 60m | 4.82% |
4° | 42.9m | 45m | 4.89% |
5° | 34.3m | 36m | 4.99% |
h=10mの場合
山で生えている木の高さはおおよそ約10 mです
こちらも$ \theta $が小さければかなり近い値を取っています

100 m以上の場合を見てみましょう
主な$ \theta $での誤差は次のようになりました
θ[°] | 理論値[m] | 近似値[m] | 相対誤差 |
0.5° | 1146m | 1200m | 4.72% |
1° | 573m | 600m | 4.73% |
2° | 286m | 300m | 4.76% |
3° | 191m | 200m | 4.82% |
4° | 143m | 150m | 4.89% |
5° | 114m | 120m | 4.99% |
いずれの場合にも、5°以下であれば相対誤差5%未満で求まることがわかりました
実際の使い方
角度の測り方
見え方の角度は手を使うことで測れます
腕をいっぱいに伸ばして
- 指一本の幅が2°
- 拳一つが10°
- 拳から親指を立てて15°
- さらに小指も立てて20°
精度を上げる
近似式の係数が60でかなりガバガバですが、これは目標物の高さを有効数字2桁以上で目視で知ることが出来ないため、係数を細かくしても無駄だからです
もし目標物の高さがわかっているのであれば、60を57にするだけで、10°以下であれば相対誤差1%未満で求まります(角度の測り方が正確であれば)
とはいえ、上で見たように相対誤差5%程度であっても、実用上は問題ないでしょう
ここで求めた距離を歩く速度$ 3\mathrm{km/h} \approx 50 \mathrm{m/min} $で割ればあと何分で着くか分かりますが、歩く速度も大きく変動します
おわりに
近似を使えば、一見難しい式も暗算で解けるほどに簡単になるのです!
みなさんも今後山に行ったときなど、ふと距離を測りたくなったら使ってみて下さい