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アンテナとロケーションの違いによる電波の飛びの変化

この記事は大学クラブ局の部誌の新歓号に載せたものを一部編集したものです
部誌だけだとちょっと消化不良なのでこちらにも書いてみました

はじめに

筆者は開局してから430FMでのQRP運用が中心で, いかに小電力で遠くと交信するか試行錯誤しています
HOMEは電波の飛びが悪いため移動運用が中心ですが, 車を持っていないので電車での移動となり, 必然的にQRP運用になってしまいます
しかし, QRPでも条件が揃えば予想を遥かに超える距離で交信でき, 毎度驚かされるばかりです


今回はアンテナやロケーションの違いがどれほど交信距離に影響するか, 実際に交信したデータを用いて調べてみました

比較方法

各条件での電波の飛びの比較には相手から送られたレポートのS値(以下, My-S値)を用いました


フルスケールは11, 9を少し上回れば10とし十分近い距離でのQSOでMy-S値が9の場合は適当に10や11に変えました
厳密な統計の検定などは行わず散布図と近似曲線で大雑把に比較しました


厳密に電波の飛びを比較するのであれば相手局の受信設備を考慮するべきですが, 本調査は今後の運用に活用するもので, 実際の運用では相手局の設備は交信するまで分からないので考慮せず, その分比較に使うデータを可能な限り多くしました

近似曲線の種類の選定

近似曲線の種類の選定にあたって, 以下の計算*1をしました


受信点における電界強度E [V/m]は、送信アンテナおよび受信アンテナの地上高h1[m], h2[m], 電波の波長をλ[m], 送信アンテナの相対利得をG(真数,)とし, P[W]の電力を供給して電波を放射したとき, 最大放射方向にある受信アンテナまでの距離d[m]が十分大きければ, 次式のようになります
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ここで E = k/d2 (kは定数)とし, 両辺の自然対数をとるとln(E)=-2ln(d)+ln(k)となります
S値は対数をとったものであり, S値をSとし, 定数C1, C2を用いて
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となることから, 近似曲線は対数近似を採用しました
Excelでの対数近似なので, データを対数変換して直線近似した, と言うべきかもしれません*2

使用器具と設定条件

アンテナの違い(比較①)で比較するアンテナはロッドアンテナ(SRH779), モービルホイップアンテナ(CSB7900)(以下, モビホ), 10エレ八木アンテナ(A430S10R)のシングルと二列スタックの4つ
出力は2.5W, アンテナ周囲の環境の違いを小さくするため標高200m以上の展望台のデータを用いました


ロケーションの違い(比較②)では荒川河川敷(標高10m), 小仏城山山頂(標高670m)で比較し, アンテナはモービルホイップアンテナ(CSB7900), 出力は2.5Wとしました



SRH779

ダイヤモンド  144/430MHz帯ハンディーロッドアンテナ SRH779

ダイヤモンド 144/430MHz帯ハンディーロッドアンテナ SRH779


CSB7900
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A430S10Rシングル(左)とスタック(右)

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荒川河川敷
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monhime.hatenablog.com



小仏城山山頂
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monhime.hatenablog.com



結果

①アンテナの違い

各アンテナのMy-S値と近似曲線は下図のようになりました
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データ数, 近似曲線の式, R二乗値は下の通り

  ロッド モビホ 八木シングル 八木2列スタック
データ数 34 49 83 49
近似曲線 y=-0.793ln(x)+11.107 y=-1.645ln(x)+14.188 y=-1.221ln(x)+12.738 y=-0.737ln(x)+11.065
R二乗値 0.106 0.251 0.186 0.045


どの条件でも散らばりが大きいため単純に比較することができず, アンテナを変えたところでMy-S値が大きく変化するとは言えません

②ロケーションの違い

 2つの場所でのMy-S値の違いは下図のようになりました
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なお, データ数は河川敷が34で山が49でした
 図から分かるように山と河川敷でMy-S値に明らかな差があり, 平均的に同じ距離で3から5の差があります

おわりに

 本調査で得られた知見を以下に示します.

  • 標高200m以上の展望台ではロッド, モビホ, 10エレ八木のシングルと2列スタックのどのアンテナを使っても電波の飛びに大きな差はない
  • 川敷と山ではMy-S値に平均的に3から5の差がある


八木アンテナは方向が違っていた場合は51をもらい最大放射方向に向けた時に59となるということが多く, 使いづらい印象を受けました

混信を抑える目的でなら使えるでしょうが, 無線人口が少なくなった今ではむしろ広い範囲に電波を飛ばしたい場面が多いですし, 山の展望台から通常交信でわざわざ八木アンテナを使う意味があまり感じられませんでした


しかし, そんな八木アンテナでもビームが鋭いことを利用して, 建物の反射で平地からでも遠くと交信することができるようです
2/10の関東UHFコンテストは10エレ八木2列スタックで参加し, 6時間で120局とQSOできました


下はその時の写真です
ページ上のアンテナ紹介の写真の方が見やすいですが、奥のスカイツリーにアンテナが向いています
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この日交信した局の中で一番遠いところでは群馬県前橋市で, スカイツリーを経由して107kmでした
反射を利用するため, 山の上から直接波で同じ距離の交信をした場合よりMy-S値がかなり落ちてしまいますが, 方向が良ければ反射を使わない場合よりずっと遠くまで電波が届くようです


山に登るのが億劫な方はスカイツリーや高層ビルの反射を使ってみてはいかがでしょうか




最後まで読んで頂きありがとうございました
次回の部誌では何を書こうか模索中ですが、今回のようにブログに載せようかと思います



他の部員の記事はこちら
absensense.hatenablog.com

参考文献

*1:野口 幸雄 : 第1級・第2級アマチュア無線技士国家試験用 解説・無線工学 CQ出版社, pp.403-404, 2017

*2:Excelグラフ累乗,指数,多項式近似の論文記載の注意